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むかしライフ研究室

第15回研究テーマ最古の家畜・イヌを考える

【犬(イヌ)とは長ーいお付き合い!?】

日本で,イヌがいつ頃から飼い慣らされたのかはよくわかっていませんが,日本で最古のイヌの骨が発見されたのは,縄文時代早期(約9,400年前)とされる神奈川県・夏島(なつしま)貝塚においてでした。

また,それと同時期とされる愛媛県・上黒岩(かみくろいわ)遺跡では,イヌの骨が手厚く葬られた状態で発見され注目を集めました。

このことから,イヌが大切な家畜であったことがうかがわれます。イヌは暗闇でもよく見え,するどい嗅覚と聴覚をもった動物であることから,縄文時代には,主に猟犬として飼われていたと思われます。


  • 【鷺田遺跡(東広島市)】
    イヌの骨が出土した穴

ところが,弥生時代になると,イヌは猟犬のほかに,食用にもされたようです。長崎県・原の辻(はるのつじ)遺跡などでは,解体された痕のあるイヌの骨が発見されました。

また,奈良時代に完成した日本で最古の記録である『日本書紀』には,イヌの肉を食べることを禁じた内容のものが記されています。さらに,中世になると,県内の東広島市・鷺田(さぎた)遺跡や福山市・草戸千軒町(くさどせんげんちょう)遺跡から食用にされたと思われるイヌの骨が出土しています。

このことから考古学的にみると,日本では縄文時代から中世にかけて,イヌが食用とされていたことがわかります。


【鷺田遺跡(東広島市)から出土した犬の骨】

しかし,その一方で,古墳時代の福山市・田上(たがみ)第2号古墳から副葬品として小像付装飾須恵器が出土し,その装飾のなかにイヌの像が見られました。また,奈良時代の御調郡久井町・熊ケ迫(くまがさこ)第2号窯跡では,イヌの足跡のついた杯蓋(つきぶた)が発見されました。このようにイヌと人間との微笑ましい関係をうかがう資料もみられます。

日本の肉食のタブーは,6世紀中ごろの仏教伝来にさかのぼるとされています。しかし,その後もイヌの食用はあったものの,日本人があえてイヌを食肉専用の動物としなかったのは,人間に忠実で,役立つことの多い利口な動物としての思い入れが強くあったからのようです。

イヌは,古来,番犬や猟犬だったのが,のちに人間に都合のよいように品種改良がなされ,牧羊犬,軍用犬,警察犬,救助犬,ソリ引き犬,愛玩犬など目的に適った品種が誕生し,現在にいたったといえます。

研究室からひとこと

  • 【介助犬(パートナードッグ)たち】
    出典:日本パートナードッグ協会HP

イヌは,人間とのつきあいが最も古い動物の代表です。

私たちのイヌへの思い入れは,獣に始まり,家畜,ペットと変化し,現在では盲導犬・介助犬などのようにコンパニオン・アニマル(パートナー)としても大変重要な存在となっています。

むかしから友好的な関係を深めてきた人間とイヌ。これからも仲良く,そして長くつきあっていきたいものですね。

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