令和7年度 発掘調査ニュース
(写真をクリックすると大きくなります)
戸手古墳(神石郡神石高原町上豊松)
豊松地域初の古墳の調査
【調査期間】令和7年4月10日 ~ 5月2日
〔調査の概要〕
芳井油木線道路改良事業に伴い、発掘調査を行いました。調査面積は38.5㎡です。戸手古墳は北から南に延びる尾根の先端付近に立地し、標高約510mで、南の水田からの比高は約40mです。本古墳周辺は平地が少なく山がちな地形で、狭い谷沿いに水田が形成されています。
調査は道路改良工事の範囲内となる古墳の南側の部分と、その南側の部分から墳頂部に向かって設定した長さ8m・幅0.5mのトレンチ部分を調査しました。調査の結果、盛土はほとんど残っていませんでした。古墳は地山を整形して造られ、横穴式石室が築かれた墳頂部を中心に盛土がされたと考えられます。調査範囲ではないため発掘はしていませんが、横穴式石室の一部が露出しており、古墳の規模や性格を明らかにするため、調査前に地形測量と観察を行いました。その結果、本古墳は径12~13m程度の円墳で、現状で高さは約1.25mと推定されます。石室は地元で産出する石灰岩質角岩を使用して構築されていますが、天井石のうち原位置を保っていると思われるのは1枚のみで、他は北側に集石された状態で置かれていました。表面観察によると横穴式石室は無袖で、規模は長さ5.6m前後、幅は奥壁付近が約1.0mで、入口はそれより狭いと思われます。石室の主軸はほぼ南北方向を向いています。遺物は調査区西側から須恵器甕胴部の小片が数点出土しました。
調査範囲が限られていることや、出土遺物が少ないこともあり、古墳の時期ははっきりとしませんが、横穴式石室を持つことや須恵器が出土していることなどから、6世紀後半から7世紀前半と考えられます。
戸手古墳遠景
(空中写真・南東から)
戸手古墳全景
(空中写真・南から)
調査前近景(南東から)
横穴式石室(西から)
トレンチ調査風景(北西から)
調査区西部調査風景
(北東から)