ひろしまの遺跡 第86号

遺物ピックアップ 昨年度発掘調査から

柆原第2号古墳出土の須恵器

 高田郡高宮町原田にある柆原古墳群のうち柆原第2・3号古墳は,道路改良工事に伴い,昨年5月から9月にかけて発掘調査が行われました。両古墳はともに直径9〜10mの円墳で埋葬施設は横穴式石室でした。
 第2号古墳からは,副葬品として須恵器や鉄刀・鉄鏃などの鉄器,金属製品の耳環が出土しましたが,なかでも須恵器は盗掘を受けていたにもかかわらず,上の写真のように完形品や復元の結果,完形に近いものが合わせて99点みつかりました。石室の構造や遺物の出土状況からつぎのようなことがわかりました。

柆原第2・3号古墳
柆原第2号古墳石室内の敷石

柆原第2号古墳石室内の土器床

 第2号古墳の石室床面の奥側には遺体を置くための大きい平たい石が敷き詰めてありました。敷石は2段存在し,下段の石は上面を平らにするために置かれていました。なお,敷石の間には隙間を埋めるように,須恵器杯身,杯蓋,高杯が割って埋め込まれており,これらの須恵器片は,石室入口寄りの羨道部出土の須恵器片とも接合できました。このことから,敷石は石室を構築した当初からのものではなく,追葬にともなって敷かれたものであることがわかりました。
 敷石の前側西半分では鉄刀や鉄鏃は出土しているものの,須恵器の副葬が見られないことから,そこには遺体が置かれていたものと思われます。また,東半分には大甕を割って床面に敷きつめた土器床が作られており,その土器床の上面には杯身,杯蓋,長頸壺,提瓶,はそう,高杯などが多数副葬されていました。
 第3号古墳の石室床面の奥側東半分には大きな平石2枚で遺体を安置する施設が作られ,仕切りを意識したと思われる石の入口側に提瓶,平瓶,はそう,高杯が副葬されていました。

 こうした手厚い埋葬は,現代の私たちに,当時,この世に残された人々の死者への畏敬の念がいかに大きなものであったかを考える手がかりを与えてくれます。

(石井哲之)
柆原第3号古墳石室内の床面

柆原第3号古墳出土の須恵器



      つぎへ