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むかしライフ研究室

第6回研究テーマ大甕(おおがめ)の内側を見る

【隠れたところに技があり】

須恵器の大甕(おおがめ)
  • 5世紀から12世紀にかけて“須恵器(すえき)”とよばれる土器が使用されていました(右の写真の須恵器は6世紀末から7世紀初頭ごろのものです)。

    いろいろな器種がありますが,今回は大甕(おおがめ)に注目してみましょう。

内側のまるい模様は何だろう?

    大甕の表面をよく観察すると,格子のような模様が見られます。そして内側をのぞくと…なんと外側より目立つ模様が一面に付いているではありませんか。このまるい模様は飾りなのでしょうか?それとも何かのまじない?


  • 須恵器の大甕

  • 大甕の外側

  • 大甕の内側

  • 内側のまるい模様
答えは須恵器の作り方にあり!

    須恵器は粘土紐の積みあげによって形成され,轆轤(ろくろ)の回転を利用した調整が行われます。調整のなかの一つの技法“叩き”では,図のように内側に当て具をあて,外側は格子板に似た叩き板で叩いて空気を抜き,かたくしめていきます。実は大甕の内側のまるい模様は,その当て具の痕跡なのです。

研究室からひとこと

    大甕の模様一つからでも,当時の人々の須恵器作りの様子を思い浮かべることができますね。当て具の痕跡の一つ一つから,叩きの音が聞こえてくるようです。

    須恵器は素焼きの土器ですが,灰色をした,とてもかたいものです。轆轤を使用する点と,図のような登窯 (焼成温度は約1000~1200度)で焼かれる点が特徴です。この技術は,朝鮮半島から伝わってきたと考えられています。


  • 熊ヶ迫第8号窯跡全体
    遺物出土状態
  • 【遺跡情報】

    熊ヶ迫第4・7・8号窯跡(御調郡久井町)は,平成11年5月から11月にかけて調査が行われました。 なだらかな丘陵の斜面に造られた奈良~平安時代の窯跡からは,多くの須恵器が出土しています。

     調査の成果は「ひろしまの遺跡を語る」(平成12年11月19日,13時~16時20分,広島県民文化センター)でも報告されます。

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